麻布学園の国語の先生が書かれた読書についての指南書。
読書についてだけではなく、前半は中学生についてあれこれ書いてあり、参考になる。
思春期の難しい子育てで親も躍起になっている。
思春期の子の親が子どもに「ふた」をしている、と言う。親は
「進むべきと考えるレールを敷いて、意見を言う」程度の関わりがよい
(「中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚」より引用)
というのが印象的だった。
いつもいつも、どこまで言えばいいのかに悩んでいるけれど、やはりそれなりの指針は示した方がいいのだろう。
中学生で伸びる子についての章では、「コツコツ派」と「感覚派」に分けている。
どちらにも長所も短所もある。
「コツコツ派」は確実に伸びるが、そこから先大きく伸びるにはなにかきっかけが必要かもしれないと著者自身の体験を語っている。挫折の体験などが必要か。
「感覚派」は集中力があり、危機感を覚えた時に能力が開花するのだが、頭の中が整理できていないから、それを助けてあげるといい、とある。
私自身はどちらかというと(やると決めてからは)「コツコツ派」だったので、「感覚派」の息子の態度にモヤモヤすることが多い。けれど、昔を振り返れば、浪人の一年であっという間に抜き去っていくおそらく「感覚派」の男子なんかに不公平だなぁなんて思ったことを考えると、自分の基準で考えるのはよくないのかな、と思う。
確かに息子と話していると何のビジョンもない。
具体的には、毎日の生活の中でルーティン化してやることを見つけるといいと思います。(中略)
そうやって日々の生活がルーティン化してくると、自然と頭の中が整理されてくるはずです。(中略)
このタイプの子どもは勉強をやらねばとわかってはいるものの、お尻に火が付かないとやりません。親が強制的に参考書を広げるなどきっかけをつくり本腰を入れることで、子どもが成績を大きく伸ばすケースも少なくありません。
(「中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚」より引用)
やはりそうなのか。言われるのが嫌な中学生、もうある程度見守るだけにしたほうがいいのかという悩みがありつつ、でも見守ってても(実際半年見守ったが)何も考えていないから何もやらないだけだった。
中高6年で考えるとしても、半年一年はバカにできない取り返しがつかない貴重な時間だ。そう思って、引用のようにしてきつつある。
実際、おかげで息子のベクトルは多少勉強にも向いてきた。
中学生になったら、あとは放っておいてもなんとなく大人になると思ったら大間違い。結局、しばらくはこうやって手をかけていかなきゃならないのかな、と思う。
伸びる子として、読書をする子をあげている。読書は勉強に対して即効力があるわけではないが、確実にそれが強みとなるのだと思う。
私自身は人並み程度にしか読書をしていないと思う。といっても今は読まない人も多いから、そういう人に比べればましか。
息子が友達の話をするときには、その相手の知識の深さに尊敬をしているようなことをよく聞く。
あらゆることに精通しているような子もいて、そういう子と話をするのを刺激的に感じているようだ。
そして本を読む息子も、いろいろな分野で知っていることが多い。
読書は即効力がないというが、学校の社会・国語のテストなどは、勉強する時間がなくても、持っている知識である程度点をとってしまった、という。
時々クイズ番組で、塾講師の地理の先生が、気候や地理的背景から特産品の多いわけなんかを話しているが、そういった多角的な物の見方を読書でつなげることができると、なにか新しいことを学ぶ時にスムーズに入っていくのだと思う。歴史的な知識などもそう。
そうやって、参考書丸暗記的ではない、真の理解をするのに読書は役に立つのだと思う。
著者は読書の効用を三つあげている。
「読解力がつく」
「語彙が増える」
「人間力がつく」
読書が好きな子の親は、本を読ませることに苦労しないが、そうでない子への親のアプローチの仕方もいろいろ書いてある。
手塚治虫などの漫画からすすめるとか、ちょっと目新しいところだと、身近な地域が舞台のものをすすめる、子どものためだけでなく自分のためにその本を買う、さらに読破する必要はなし、という。
実は私も何冊か挫折した本がある。読み飛ばしてもいい、というやり方をしていれば、最後までたどり着けたかもしれない。
実際、よく知らない宗教的な説明の多い部分で理解が追いつかなくなったせいで、挫折したり、描写が苦しすぎて耐えられなくなったり。
ただ、最近はやりのライトノベルはあまりおすすめしていない。
読み取る努力なく読めてしまうので、読解力を高めるには適さないと。
実践編では読解力を高める読み方について書いてある。
ここで面白いと思ったのは「批判的に読む」ということ。
たしかに、そういう視点があれば、物を深く考えるきっかけになる。私も高校生の頃読んでわからないところがたくさんあった本に、疑問符だらけの感想を書いたけれど、国語の先生は評価してくれた。その時点ではそれで及第点ということだったのだろうか。
そして親向けに「走れメロス」を題材に、読み方のポイントを随所に取り混ぜながら説明されているが、これがなかなか面白い。
ああ、ここまで読めたら深いのだろうな、自分にはできていないなぁと実感。
必ず力がつくサブノートの作り方の解説がある。読書でも子どものタイプにより導き方が違うという。
口語的能力の長けている子、じっくり考え込む子。前者には全部読んでじっくり考えさせる、後者には単純化して考える方法を教えてやる。
読書を楽しめるために必要な読解力と語彙力。どちらかに偏っても楽しめない。
そのためにサブノートをすすめている。
教科書のコピーと、語句の意味、先生の板書、印象や感想を書く4つに区切るそう。
感想を書くというのは新鮮。確かに記憶には残ると思う。
最後はオススメの本のリスト。
いろいろなジャンルに分けて紹介している。
夏休み、何を読ませようかの参考に。
なお、同じ著者で小学生向けの本もある。