前回の続きです。今回も「頭のいい子をつくる夫婦の戦略」を読んで、その内容から私自身の経験や意見などを。
12歳までにやるべきこととは?
子どもが中学受験を終えて、電車に乗って学校に通うようになると、それまでの近所の小学校に行っていた小さい子から大きく環境も代わります。
中高一貫校で特に公立中学育ちの私と比べて大きな違いは、高校生の存在でしょうか。
18歳までが一緒に行動する部活では、行動範囲も感覚も先日までランドセルを通っていた子どもの生活とは大違い。
公立中学校が、学校の厳しい管理でいわゆる「子ども扱い」をしているところを、いきなりすっとばして高校生どころか大学生のような行動範囲だと思うことも多いです。
さて、そんな環境に入った子どもたちは、年齢的にすっかり思春期に入ってしまい、この間までの素直な子はいなくなります。
12歳までと線をひいているのは、小学生のうちに、ということだと思います。まさにこの新しい環境に入って行く前にやるべきこと。
本書によれば、この素直な小学生のうちに将来について考えておくことが大事と書いてあります。社会に出た時にどうあるべきかから逆算して、大学は? 高校は? 中学は?と、逆戻りして考える。
ええー? 社会に出ることまで小学生で?
もちろん、正確にたどれるような計画は難しいとは思いますが、話をしておくことは効果的かと思います。
私は実は中学生の時に、進研ゼミをやっていて、そこの相談コーナーに手紙を書きました。
出版社などに就職するにはどうしたらいいですか?
といった質問だったと思います。
担当の方から便箋5〜6枚の丁寧なお返事がきました。
そこに、出版社に入るには四年制大学を出ておいた方がいい、というようなことが書いてあり、そこから私の高校選びが始まりました。
高校では悲喜こもごもありましたが、そのおかげで大学に入れたと言っても過言ではありません。
なぜなら自分の周りには女の子で四年制大学を目指していた子は当時ほとんどいなかったので。(短大の方が就職率が高い時代でした)
↓今ならこんなのか? 会員ならチャットや電話もOKみたいです。
多くのお子さんは目の前の部活や遊びやテストに追われてなんとなく「入れる学校」に進もうとしてしまう気がします。
上述したように子どもが親の言うことを聞いてくれる12歳くらいまでにこういった観点で将来を選ぶのだということくらいは最低でも話した方がいいと思います。
その戦略としてPDCAサイクルというものをあげています。
Plan=計画
Do=実行
Check=点検・評価
Act=改善して再実行
大事なのは特にチェック。
やらせてみたものの子どもの興味がない、苦手などがある場合には軌道修正することも考えるということが大事だそう。
確かにそうですね。思うように進むとは限らないし、ここで合わない物に執着すると遠回りになってしまうこともあるかと思います。
知り合いに子どもが全くやる気がないのに中学に入ってもピアノを惰性で続けさせているのを見て、もっと子どもが好きなことに時間とお金を費やせばいいのにと思ったことがありました。思ったより子育ての時間ってないのだと実感してからはなおさら。
9歳から12歳でやっておくべきことのリストをいくつか抜粋(要約)
- 子ども自身に目標を作らせ実行させてみる
- 興味のありそうなものを習わせる
- とことんやらせる
- 社会の出来事などについて話をすることで社会への関心や思考力を鍛える
- 調べる習慣をつける
- ルールや常識を教える
- 得意なことを見つけて伸ばす
得意なことは、大事だと思います。これでやる気と自信が育まれるか、苦手なことばかり押し付けてやる気も自信も失うか。
これは、自信をつける以外に、キャリアデザインを考える際にその糸口にもなってくれるのだそう。
エドガー・ヘンリー・シャインというキャリア研究の第一人者が自分を見つめる際に次の3つが必要だと述べているそうです。
- 自分は何が得意か
- 自分は何をやりたいのか
- 何をやっている自分に価値を感じるか
(本書より引用)
得意な分野なら前向きに、労を惜しまずできる。そうなる素地を小学生のうちに作っておいてほしいと述べられています。
実際、知っている子で、勉強は苦手だけれどダンスがとても得意でそちらにかなりの力を入れている子がいます。いま、いろいろなところで少しずつ活躍し、評価されたりしてその成果を表しています。なるほど、うまく導いたなぁと思います。
親戚でも海外留学して国際的に活躍している人もいます。
どんな子にも「得意なこと」はあると思います。息子の友達を見ても、いままで勉強を見てきた中学生たちを見ても、伸ばせそうなよいところのない子はいませんでした。
得意の中には、勉強はいまいちだけれど、接客業がすごく向いていて、コンビニバイトをしている高校生でしたが、多くのお客さんと仲良くなり可愛がられていた子もいました。すごい才能だなぁと思いました。
ピグマリオン効果というのにも触れています。
人は期待されたようになっていく、といったもの。
本書からは離れますが、下のサイトに実験結果が載っています。
親の期待が子の成長にどれだけ影響が大きいかを感じる結果です。
ぜひ読んでみてください。
そういえば、私が出版社で物を書きたいと中学時代に思ったきっかけは、作文などで評価されたことが多かったからです。(結局路線変更して、一切書くことを学んでいないので、いまの文章にツッコミを入れないでくださいね!)
一方、苦手克服ばかりに注目する親だと、どうしても褒めるところがないので、子どもも評価されて「いい気持ちになる」という機会を逸してしまうでしょう。
息子の体操教室などは、運動エリートの子が多かったので、特によくもない、どちらかというと不器用な息子には褒めどころがないし、無理に褒めても白々しい。
それで辞めさせましたが、体力テストでも全体だと平凡でしたが、人より得意なものは、「反射神経すぐれているよね。」「持久力があるよね。」と持ち上げる努力はしました。
また、ドラムを習わせていて、そちらはよくできたので、「リズム感があるね。」「よくできるね!」と話す機会は多かったです。
もちろん発表会前は厳しくやらせましたし、受験勉強なんかは鬼コーチで「そんなのもできないのか!」と怒ったこともありましたが。
また、年齢に比して難しいと思う言葉を知っていたりすると「どこでそんなの覚えたの?」と聞いていました。
以前息子は根拠のない自信の持ち主と言いましたが、意外と褒めていたかも。
子どもってそういうことはしっかり聞いているのですよね。
一方親が親バカすぎてもいけない。
本書では子どもの能力を冷静に分析することをオススメしています。
受験でも、前回の記事で触れたように、期待しすぎて子どもを潰してしまう可能性も。
親はコーチとして、
試行錯誤のなか、「可能な無理」ならやらせ、「不可能な無理なら方向を変える
(本書より引用)
この「可能な無理」ならやらせる、というところがなかなか私がこの本が好きだと思う所以です。
結構育児本って「褒めて育てる」か「厳しく育てる」か、みたいな両極端のものが多いような気がします。
「可能な無理」はその子によっても違うということをこの本では言っているような気がします。
成績低迷でくじけている子には自信を持たせる、レベルを下げることも考える、調子よく進められている子にはもうちょっと負荷をかけて頑張らせてみる、など。だからこそ、親がどう見極めてどう導くかの「戦略」が必要なのだと思います。正解は一つじゃない。
小学生のうちに調査・研究して発表する訓練を
自分で対象を設定し、調査し、発表するという体験を小学生のうちにやらせたほうがいいということも述べられていました。
これは社会に出たら問われる能力ですよね。
大学によってはそういった取り組みや授業を設けているところもあるそうです。
夏休みの自由研究などが良い機会かと思います。実際きちんとオリジナルのものに取り組むのは相当難易度が高いと思います。
我が家でも毎回頭を悩ませましたし、特にいいものができたという思いもないのですが、試行錯誤してテーマをあれこれ親子で論議し、(研究対象やその内容が適切かどうかはおいておいて)失敗をしたりして作り上げたことは、それなりの経験になりました。発表用にどんな紙にどのようにまとめたら見やすいか、教室では大きな模造紙の子もいれば、ノートのようなものにまとめて手元で見られるようなものも。
息子は六年生ではパワーポイントで15分くらいのプレゼンを作ったけれども、「長すぎる、難しくてわからない」と友達に非難をされました。それも経験。
基礎学力を固める
思考力や創造力、表現力など伸ばすべきという点数で評価しづらい能力のほかに、あらためて基礎学力の大切さにも言及しています。
中学受験の塾の見学をしたとき、そこの先生が話していて印象的だった言葉があります。
「たとえば四谷大塚の「予習シリーズ」が全部理解できれば、開成に受かるんですけどね。」
クイズ番組でおなじみの宇治原さんも「教科書は全部大事なことが書いてある(からマーカーで線をひかない)」と言っていました。
サピックスでは「基礎力トレーニング」をきちんとやる子は成績が伸びる、と言われていましたし、実際六年生で、ほかの勉強が忙しくて一時期それをサボったら成績が落ち、またやることにしたら成績が上がったという話も雑誌に載っていました。
我が家ではなかなか頑固者の息子にこういったことをやらせるのが困難ではあったのですが、未だに私はわからなければ教科書の該当箇所を読み返すところから始めなさいと話します。
本では学研の「小学生白書」から、小学六年生でも勉強が全部分かる子は20%しかいないことに触れています。
↑いまはこの本でとりあげた2010年は載っていないようですが、小学生の親御さんには気になる内容がたくさんあります。
そう考えると、先取り学習ばかりでなく、むしろきちんと習ったことができているかの復習が大事だということになります。
志望校は親が絞り込む
進路についての戦略も、小学生のうちから青写真を描いておくとよいとも。
もちろん中学、高校で軌道修正がありうるが、何も考えていないと対策が後手後手になるという。
確かに運動や芸術系なら早いスタートが肝心ですし、学力も積み重ねですから対策をしていないと、手遅れになる可能性は大きいと感じます。
以前も書きましたが、私が勉強を見ていた子の中には、小学生時に勉強する習慣がなく、高校生になって資格試験にチャレンジしようとしたものの、基礎学力の不足や長時間の勉強への耐性がなく、断念したことがあります。
個人的には小学生のときに遅れをとらないことが大事だと思っています。
勉強面で大変課題を抱えたお子さんがいました。共働きでお母さんが帰るのは夜遅め。当然子どもは自己管理もできず、小学生の時はどうにかなったものの、中学生では大きく落ちこぼれました。
そのときになってお母さんが仕事をやめてみたものの、今度は反抗期で勉強の手助けができなかった、というのを聞いて、あと3年くらい早かったら、と思いました。
もちろん各ご家族の事情はあれど、その家庭では、お母さんが仕事をやめることのハードルは低かったのです。
また、本書では子どものタイプ別に進路を考えるといって、考えかたの例をあげています。こちらもざっくり要約を。
◯アイデア豊富の仕切りたがり
学校行事が盛んで子どもの自主活動を尊重する中高一貫校
↓
アイデアやリーダーシップを活かせるマスメディアなどの業界に就職実績がある大学
◯裏方で頑張るおとなしめの子
着実に進学実績を伸ばしている中学または比較的評判のいい公立中学
↓
高校受験は地元国立大かMARCHクラスに進学実績の多い高校。
事務職、公務員などが向いているのでこのクラスの文系学部へ
地に足のついた進路選択ってこういうものではないでしょうか?
みながみな、難関中学、難関大学を目指す必要もないと思うのです。
そして、偏差値や大学合格実績だけでなく、「生きる力を育ててくれる学校か」という尺度も加えてほしいと言っています。
中学受験での志望校選定のポイントとして
- 考え、表現する力を養ってくれるか
- それぞれの子の独創性や創造力を伸ばしてくれそうか
- 社会に出て役立つ人間の育成に力を入れているか
- 職業に対する意識を高めてくれるか
(要約)
を挙げています。
三年と短くはなりますが、高校だって大学だって、こういった視点で選定することが大事なのかな、と思います。
私自身がいまになって、
- 進学実績とカリキュラムだけで選んだ高校
- 偏差値と通えるところ、知名度程度でしか選ばなかった大学
と、どちらも後悔しているところです。
もしこのような視点を、子ども自身もどこかで受け止めて大学や職業まで選ぶことができたら、きっともっともっと充実した人生が送れるのじゃないか、と少し期待しているのです。
今回で終わるかと思ったのですが、まだまだ書き足りないのでまた次回。
次は、塾選びや中学受験を決めた後の親の態度、子どもの個性、親としてのあり方などなど。
大学の四年間という時間をどう捉えどう過ごすかなんてことについてもいい話が書いてあります!