悩める子育て

幼児から中学受験→難関校からの大学受験、その先を考える

社会に出てうまくやっていけるために

前回の続きです。

 

vt-maguna.hatenablog.com

 

多様な性質を持つ人を理解する社会

奥村さんの同僚の若者に、決して飲み会などに出席せず、人と飲食をともにしない人がいます。ある日その理由を尋ねると、その人は食べることとしゃべることを同時にできないのだそうです。

店でBGMがかかっているところに入ると、食べていいのか聴いていいのか混乱して食事もままならないそう。私が想像もしないようなことで苦しんでいる方がいることに驚きました。無音の店があればいいのに。
私などは勝手にBGMをシャットアウトして聞こえないので、本当に脳って人によってだいぶ違うのだと思いました。私の場合は取捨選択しすぎて記憶も曖昧だったりします。

 

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奥村さんも子どもの頃学校でざわざわしている中での先生の指示を聞き取れず、課題を忘れたり聞いていないと思われて怒られた経験があるそうです。

 

そういった性質があることを職場の人が理解をすることで、大変な困難が少しの工夫で避けられるのではないか、と思います。

www.nhk.or.jp

 

4年前の番組ですが、見たのを覚えています。こういう取り組みが増えてくると、社会は充実度が増すと思います。

類まれな才能がある方も多く、それを無益なコミュニケーション能力不全が原因の退職などで失わなくて済むでしょう。

よく「東大生は使えない」などと揶揄する風潮がありますが、能力の偏りがあるだけで、多くの人は知性の部分に偏りが少ない分コミュニケーション能力がある、それだけじゃないのかなと思います。

 

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それでも周りの理解を求める前に自らが合わせる道を探す必要はある

まえに栗原類さんの本のところで触れましたが、息子も時間やものの管理など、社会人としては当たり前に要求されるであろうことのいくつかがとても苦手です。

ASDの方たちがその生来の特性のために大変な苦労をしてきたこと、それを一人でも多くの人が理解するようになれば、その人たちの苦労はきっと減るだろうと思いつつ、それでもなかなかそういう社会になっていくには時間がかかると思います。

 

こういう文章が、一般的に広く知られるべきと思ってやみませんが、他方で親としてはまず、息子が周りに順応できるように工夫をしていかなくてはならない、そのために親も尽力すべきだと思うのです。

 

それと、自分が苦手であるということをまず理解することが大事理解をして初めて対策ができると、いつも息子に話しています。

自分の苦手をはっきり理解せず、つい「たまたま忘れただけ、次は大丈夫。」などと思っているから忘れない工夫もしないのです。

そういえばものの探し方についても奥村さんの同僚の傾向としてかいてありましたが、いつもとほんの少し(30cmくらいなど)ずれた場所に置いてあるだけで、目に入らなくなってしまい見つけることができない、というところで、息子もとても探すのが下手なのを思い出しました。

それなりに探させた後、私がものの10秒で探しだす、ということがとても多いです。もしかしたら、似ているのかもしれない。
私は何度言ったらきちんと探せるの! と怒ってしまうのですが、それは自分と同じように探せて当然という思い込みからくるもの。
それがとても不得手である、と考えれば、もう少し冷静にアドバイスできるかもしれない、とも思いました。
 

この連載で、奥村さんが自分と似た症状を持つ友達と違い結婚もでき、仕事も転々としなくてすむ大きな原因と思うことに、高校時代に自分は友達に嫌われる行動をしているらしいと知ったことがあります。

それで、彼は多数派の人たちとうまくやっていく術を「学習」して、身になっているのです。

確かに例えば身体的に障がいを持っている方でも、努力することでたとえば手が使えないけれども足で自在に絵を描いたりできるようになる人、目が見えなくてもかなり自由に生活できる人など、その障がいを少しでも克服して、何もしないよりはずっと社会生活をうまくできるようになる人がいます。

そのためには大変な努力が必要で、そこをどこまでやればいいか、というのは自分で決めていくしかないと思うのです。(障がいの有無に限らないですね。誰でも自分の能力を最大限出すか出さないかは自分で決めるし、その結果が自分に返ってきます)

 

テレビ業界で働く奥村さんは、ある日突然仕事に余裕ができ、上司から夏休みを提案されるのですが、一週間の夏休みを突然与えられてもどう使って良いかわからず軽いパニックに陥ります。

スケジュールのない生活など信じられなかった彼は、その168時間(睡眠を除いて126時間)をどう潰すかに悩みます。
旅行、読書、考えているうちに奥さんから息子さんの勉強を見てほしいと頼まれると、その夏休みの間じゅう勉強のスケジュールをたててしまい、二人から拒否されます。
そのまま夏休みに突入してしまい、はからずもスケジュールのない休みを送ることになってしまうのですが、毎朝三人で話し合ってその日どう過ごすかを決めてのんびり過ごしたことで、初めてスケジュールから解放されて生活をすることになりました。
(子どもの頃は夏休み初めに一日くらいを使って、夏休みすべての日のスケジュールを30分刻みくらいで作成してそれを厳守しようとする方なので、この行動は信じられないことです)

それを人生最高の夏休みだった、と語っています。

自分が一番苦手なことと思っていたスケジュールのない生活が、大変快適であることを知ったという興味深いエピソード。

 

これを読むと、必ずしもその人の習性に配慮ばかりすることもないのかもしれない、と思いました。

 

発達障害なんだから仕方ない、かわいそう、とだけ考えて不都合から避けているばかりでは、社会生活になじめないのだ、ということを奥村さんの友達の話で痛感しました。

大人になったらどうにかなるんじゃないか、実際そういう人もいるかもしれないけれども、それでもより周りとうまくやっていけるように、自覚と工夫が必要だと思うのです。

居場所を探すことが一番大事

ただ、周囲となじまなくてはいけないのだから、どこでも我慢し、順応すべきと安易に考えるのはそれも違うと思うのです。

 

職場も学校も、探せばより適した場所はあります。奥村さんは自分の時間へのこだわりや正確さが生かせるテレビ業界に入りました。

奥村さん自身もはじめはそこが自分に合っているとはとても思えなかったそうですが、同様の症状を持つ先輩を頼って見学に行くと、実際似たような症状を持つ方が多いし、彼らがその緻密さ正確さを評価されていることを知ります。

言ってはいけないことを言ってしまうせいで、それまで就職活動で惨敗していた奥村さんが、その先輩や先輩の同僚に言われた長所をアピールしてテレビ業界でいくつか内定を取れたそうです。

 

適材適所。もともと大学になるまで自分のことを理解してくれるような友達ができたこともなく、無理して人に合わせることにもほとほと疲れていた彼が、数学サークルに入ったことで自分と似たメンバーの多い環境でのびのび充実した大学生活を送れたのであるし、就職先を見つけたきっかけがその先輩であることを考えると、自分の居場所を探す、ということはとても大事なことなのだと思います。

 

実際息子を中学受験させた一番の理由は、ちょっと変わった面のある息子の居場所を探すことでした。小学校も同様でした。
そして、そのまま地元の小学校から地元の中学校へと進んでいたら、きっと息子の環境は大きく違っていただろうな、と実感しています。

 

みなそれぞれバラエティのある子が集う息子の学校では、そもそもそれぞれが違いすぎていて出る杭が見極められない。そして他人が浮いていることにそう興味もない、という雰囲気があるようです。
小学校と中学校は全然違った環境ではありますが、それぞれ息子にはきちんと居場所があるようで、落ち着いて通っています。

 

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親としてその子どもの居場所を探す手伝いをしてきたつもりだし、これからもそうしていくと思います。

職業選択についてはまだ暗中模索の状態です。
色々とできない様子を見るにつけ、もう大きいのだから親が気にすることではない、という一般論はありますが、もちろんレールを敷いてあげるという気持ちはありませんが、 放っておいてしかるべきところに収まるとは思えないことを今回の連載を読んで改めて感じました。

20歳そこそこの社会経験のない、いくつか困難を抱えた息子が自分の特性にあった職場を選ぶときに助けとなるようなアドバイスをしたり、そもそもきちんと自分の将来を考えるように導くことがこれからの私の課題かな、と思っています。

 

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